かけがえのない一瞬

三輪亮介の日常ブログです。ここでは仕事の近況・日々の想いなどを綴りたいと思います。

散文詩

4月生まれと3月生まれ

4月生まれの君の背中は眩しくて 3月生まれの僕はいつも影みたいにくっついていた 通学路を外れるのが好きで 大きなランドセル揺らして 振り回す木の棒 蹴飛ばす石ころ 最後はいつもの公園 そこが僕らのすべてだった 僕の初めてはいつも君と 部屋の中じゃ聴こ…

朝方のシャワー

朝方のシャワーは 頭を下げれば 昨夜の疲れを流してくれるようで 見上げれば 今朝の僕を新しくしてくれるようで 僕は視覚を閉じて 何かを開く 僕の頭は 誰かに洗ってもらった方が 気持ちがよくて どんなに真似てみても うまくいかなかった 一人じゃ感じられ…

幸せのレシピ

今も昔も 僕らは地球の鍋で 作り方がわからない料理を試している 道路を走る車は未来の形になったかな 電車の車窓に映る表情は 昔の人が願ったように柔らかいかな パラパラパラパラ 今日もどこかで 「幸せのレシピ」をめくる音 あの頃の君は まだ生えたばか…

はなむけの言葉

まるで、ゴール前で最後のパスを チームメイトに送るサッカー選手のように、 絶対的な信頼を寄せる音で彼を呼んでいる。 その音は、共に乗り越えてきた、 たくさんの光景で鳴らされている。 いくつの朝を一緒に迎えたか、もう数えられない。 ひとつひとつ、…

12歳の恋

絵に描いたような桜舞う入学式 僕は体育館で 不安と期待の空気を吸う 背が低い僕には 見えづらいものばかり 肩と肩の間から かかとを上げた景色が残る いつも廊下に響き渡る大きな声 ショートで元気で色黒で みんなのチャイム 君はその昔フランスを救った少…

くれいジィ

お前がジジイになった時 孫に何を語れるか 想像してみろ 「大学を留年した話」 理由もなく留年をした話 サークルに燃えすぎて留年したバカ話 どっちが面白い? 「気になる子がいた話」 何もせず何も起こらなかった話 声をかけて公衆の面前でフラれた話 どっ…

春を待つように

僕はキリンの首になって 春を待つように あなたを待った 初めて降り立つ街は 着替えたように暖かい空気で 駅前にある木目調の古い喫茶店からは 焼いたパンの香りとコーヒーを挽く音がした 新聞を広げながらカプチーノ 知らない人が窓際で朝を始めている 信号…

投影図

その建物は空から眺めていると 丸い形をしていて 僕は円柱のようなビルを想像していました でも いざ地上に下りて正面に立ってみると 三角の形をしていて 円錐のようなビルだったのです 僕は戸惑いながらも 入口の警備の人に会釈をして 鋭い自動ドアに吸い込…

大切なものは目に見えない

大切なものは目に見えない 誰にも見えない「未来」を 思うように描いてみただけさ 僕が描いた絵 「夢」という絵 誰にも見えない「空気」を 場に合わせて読んできただけさ 僕が読んだ本 「嘘」という本 誰にも見えない「気持ち」を 拳を握るように込めてみた…

感情

この感情はなんだろう 隣り合わせの感情が 僕の中を行き来しているのか 二つのドアの前で 僕が右往左往しているのか どちらにせよ一つじゃない 二つのまま進んでいく 人は生まれながらに 善なのか悪なのか 生きていく中で 染まっていく生き物なのか どちらに…

大きなアーチを描いて 街と街を結んでゆく橋 大きなマンションが現れて 道ゆく人が思うこと 前に何があったっけ 色褪せる暇もなく カラフルに忘れちゃう 高校生がダンスを踊って 駅のホームで笑っている 傘を振ったサラリーマン 苦手なアイアンの練習をして…

ゲシュタルト崩壊

僕に見えているのは 「君」という「カタマリ」 でも本当は 「誰かを想う優しさ」 「夢中になってしまう瞳」 「甲高く笑う声」 「凝ってしまう背中」 「短気なところ」 1つ1つの「要素」が集まって 「君」は構成されている その「1つの要素」だけを見つめ…

スーパーマンじゃないんだぞ

いつも聞いてよって言うけどさ スーパーマーケットじゃないんだぞ 肉は肉屋 魚は魚屋 俺は俺だ いつも一緒がいいって言うけどさ スーパー銭湯じゃないんだぞ プールは水着 お風呂は裸 俺は男湯だ 決められたレールの上を歩くのは嫌がるくせに 真っ白な紙に自…

1988年の一歩

幼い頃の僕は カブトムシが好みそうな雑木林を探検するのが好きで 湿った枯葉が敷き詰められた地面を踏みしめては 「この場所を最後に踏んだのは 僕の前には誰だったんだろう」 なんて 20センチにも満たない小さなマジックテープ式の スポーツシューズを 眺…

筋肉痛

思い当たることがない筋肉痛ってあるだろ この胸も同じさ 動かすとまだ痛みが走るものだから とりあえず ここでずっと 自分の身の上に起こった出来事を並べている あれかな これかな そのどれもが正解のようで そのどれもが違うように思えた いつの間にか治…

in my pocket

君はなにかを探すように 僕のポケットに手を入れて 不意になにかを見つけたように あたたかいねと笑う 僕らは川の向こうの 白んだ空を見つめながら もう長いこと運転を見合わせている春を 河原のホームでじっと待っていた 君はすぐに迷子になる子どものよう…

赤青えんぴつ

僕らは 赤青えんぴつだった 彼女は赤えんぴつのように忙しくて 誰かの答えに頷いたり首を振ったり 助言は相手の答えの邪魔にならないように そっと右側に添えてやったり 実にたくさんの人から彼女は愛されていた 僕は青えんぴつのように出番が少なくて 賑や…

私が見つける星

私は 私を決めてこなかった 苦手だった漢文の試験問題のように 消去法で残った番号を選んで来ただけ 今 クラス替えを繰り返す教室から 初めて外の世界に飛び出したときに 名札を外された私は 私を人に説明できなかった 役がないのに現場に迷い込んでしまった…

時間

時間は 進んでいって 運んでいって 花が咲いていって 花が散っていって 過ぎていって 消えていくね そしてまた 時間は 生まれていって 刻まれていって 思い出を作っていって 思い出を薄めていって 飲み残された アイスコーヒーだね 時間は あたたかくなくて …

メロスの理由

回り回る 一週間 僕がスーツでボールペンを回せば あいつはトレーに乗ったパンを回す くるくる くるくる 正面から螺旋階段を昇る人 裏山から崖をよじ登る人 辿り着くのは同じ場所 それぞれ見てきた景色 伝え合えばいいさ 一緒に笑ったね 一緒に泣いたね 教室…

Black board and White paper

何を書くのか忘れてしまった教師は チョークを握ったまま 黒板を見つめてしまう 一人の生徒の囁きに救われ そうだそうだと 照れ臭そうに 一文字目を書き始めたら チョークは一気に 粉を噴きながら黒板を走った 頭じゃなくて身体で覚えていたんだな いくら考…

元素記号「Ir」

「イマ」という瞬間を いったいどれくらい確かな紐で 結ぶことができるだろう 向かいの家の雨戸は毎朝6時に必ず開く 3日前に宣言されたダイエットがある 河原ですれ違う老人は 1週間後もラジオを流しているか 付き合い始めた恋人たちの3ヶ月後はどうだ 1年…

洗面所

身体が硬い今日の 背中を押して明日へ伸ばそう 右手を上げたら 左手を上げる天の邪鬼さ 両手に溜めたお水をかけよう おはよう 滴りを許す ほんのひと時 どんなに願っても あるとき止まってしまった身長で のん気に伸びているヒゲを そっとさすってやる 大丈…

say anything

最近の僕は まとまっているより 散らばったくらいの方がいい 脱ぎ捨てた靴下に 昨夜の疲れが溜まっている 読みかけの雑誌に お気に入りの日曜日が載っている 飲み残したコーヒーに 苦い思い出が浮かんでいる 僕はそれを毎週月曜日の朝 流しに捨てる トリスタ…

curtain

一度始まったら 止めることも戻すこともできない演劇のように 幕が上がったときの 舞台役者の気持ちで 今日を生きたい 僕は「自分」という役を上手に演じられているだろうか セリフは自然と口から溢れ 身体は勝手に動くようになっているだろうか 「本物」に…

カケラ

いつか僕は バラバラになってしまって 自分のカケラを探す旅に出た 探し当てても 果たしてこれが 本当に自分のものであったのか そうでないのか わからなくて その度に 周りの人に聞いて回った 「そうだ」という人 「そうじゃない」という人 僕は迷ってしま…

Back Number

君のハンドルに 一日を任せたら 僕はもう 車窓に貼り付いて 外の世界を覗く 子どものよう 帰省する車内で いつまでも続く冬の田園を眺めていた 子ども ちぎられた雲たちが 何かを描いていくのだけれど いつも形になる前に 僕は通り過ぎてしまう リピートを繰…

RUNWAY

テクノに揺られ フラッシュを浴びながら 前だけを見続けるモデルのように 胸を張って歩きたい 私が歩いても 音楽は流れないし フラッシュは焚かれない 満員電車で足を踏まれながら 少し擦れた 革靴を眺めてしまう 例えば この小さな交差点で 向かいの男性た…

名前が同じだけの3月11日

君との思い出を 胸ポケットにしまい込んだのを忘れていて そのまま洗濯しちゃったものだから もうしわくちゃのカチカチさ 破かないように ゆっくり開いてみるのだけれど 最初の文字がもう消えちゃっていて まるで歌い出しを忘れてしまった歌のよう 何度も回…

涙さん

涙さんに聞いてみた なぜこぼれてしまうの? 涙さんは困った顔をして 今度はもっと 泣いてしまったっけな うれしいの? かなしいの? わからないまま伝うものが きっとたくさんあるのだろうな あの日の僕には ただ隣に座ってくれる人がいてね 朝になったら …