かけがえのない一瞬

三輪亮介の日常ブログです。ここでは仕事の近況・日々の想いなどを綴りたいと思います。

本気

満足できるものとは程遠かったが

自分が最後に自分に納得するために

やれるだけのことをやる

 

拍手が起こらないカーテンコールで

胸を張れるかが重要だ

 

開き直りではなく受け入れる覚悟が

胸に生まれているかが重要だ

 

真面目か遊び人かは重要ではない

本気か本気じゃないかが重要だ

 

仕事を終えて1日の眠りにつくとき

冷めない興奮に安心する

本気の自分に安心する

 

他人はいい

自分が重要だ

 

俺は本気だ

血豆

ねえ

僕には何ができるだろう

 

誰かの命を救えるような手も

誰かに夢を与えるような足も

誰かを包み込めるような背もない

 

何もできないくせに

何かができるようになりたくて

必死で練習したのは“鉄棒”だった

 

血豆が潰れて

大事な試合のときに

鉄棒から落ちてしまったっけ

 

あの

落ちてゆくときに見た

体育館の天井と照明が

今もまだ

僕の瞼に焼き付いている

 

ああ

やっぱりダメだった

 

そんな言葉が頭の中に過って

ドスンと小さくマットに落ちた

 

なぜ

あのときのことが思い出されるのだろう

 

僕が誇りたかったのは何だったのか

大車輪や空中逆上がりが何回できたとか

一糸乱れずきれいに着地できたとか

そんなことじゃない

 

 

血豆だ

 

 

あの痛くて痛くて

みすぼらしい血豆だ

僕をあのときマットに落とした血豆だ

 

あの血豆こそ

あのときの僕の証

すべてをかけた証

僕が僕である証だった

 

そして

 

今も胸を張って誇れる

僕にできたものだった

星に願いを

果てがない意識の中に

一筋の光が見える

まるで闇夜に浮かぶ月のよう

 

それでも晴れない明日の空に

どこまで僕は待てるだろう

信じられるだろう

 

みんなに向けられながら

誰にも向けられていない

天気予報のように

 

待つのにも才能がいる

走ることに才能があるように

 

期限のない約束ほど

確約のない未来ほど

幻のような輪郭を纏っている

それを固く信じることは容易い

しかし

それを頑なに信じ続けることは

誰もができるわけじゃない

僕にしかできないことだ

 

そう 信じ続けた

 

いつも願いを込めて目を瞑る

そして確かめるように目を開ける

何も変わらない今日に

少し肩を落としながらも

また明日に願いを込めて目を瞑る

 

やがて来る ある朝に

 

願いを込めて

途中下車

私の背中に

翼はあるだろうか あっただろうか

 

跳んで 跳んで

私は私になる

 

 

車窓に映る景色は 毎日同じなのに

それを見つめる私の顔は

その日その日で違う

考えて考えすぎると

面倒くさくなってしまう

離してしまいたくなる

 

その価値をわかっているのに

その価値を持ち続けることに疲れてしまう

そんなふうに離したものはきっとたくさんある

後悔はしていない

というより

後悔すらできていないのかもしれない

 

幾つもの駅を通り過ぎていく

途中下車した自分を想像できないように

私は 離してしまった未来を 想像できていないのだ

 

ビルに遮られながら

ビルから抜け出すように

光が私の顔をストロボのように照らす

 

どんなに素晴らしい舞台装置を作っても

光がないと何も見えない

ある舞台装置家が言っていた

 

 

私の背中に

翼はあるだろうか

あっただろうか

 

跳んで 跳んで

やっと私が私になれたときに

果たして照明は 私を照らしてくれているだろうか

本当に届けたい人に

本当に届けたい私を届けることはできるだろうか

 

 

ああ

また乗り過ごした

新しい朝に開く双葉

命を燃やす話を聴くと

僕はいま 燃えているだろうか

夢中で生きているだろうか

あの頃の自分に負けないくらいの

大人になれているだろうか

いくつもの自問が

心にふつふつと生まれてくる

 

悲しみの淵を歩く人がいると

砂場の縁石の上を

俯きながら

ずっと歩いた夜を思い出す

 

大切なものを

なくしてしまった人がいたら

たくさんのものを求めすぎて

本当に大切なものが

掌から溢れてしまった

あの日を思い出す

 

 

めくりめく日々の中に

人の心に生まれたものから

僕の心に生まれるものがある

 

誰かの葉っぱと僕の葉っぱと

双葉みたいに

朝露を零しながら

新しい朝に

開いていくイメージをしてみる

 

誰かの笑顔を見ていると

うまく笑えていないかもしれないけど

なんだかフッと

口角を上げてしまうクセがある

 

もしかしたら双葉の片方は

不格好かもしれないけど

 

いつも開いて行けたらいい

 

新しい朝に

春が来る

春が来る

 

結局出せなかった手紙も

いつか読まなくなってしまった本も

どうしても思い出せない映画の結末も

 

そのまま そのまま

 

僕らは歩く 3月の風の中を

日差しと風に肩を揺らす草花たち

歌なんか流れていないのに

何かに合わせるように

鼻歌なんか歌ってしまう

 

いろいろなことがうまくいかなかったり

どこかで落としてしまったり

失くしてしまったり

僕らはひどく欠けながら

バランスが取れないまま

今日もベッドからフラフラと起き上がるけど

 

ほら ほら

 

こうやって歩ける ぐんぐん歩ける

眩しそうに見上げてみる

悔しいくらいに青い

 

出せなかった手紙なら

またいつか書くときは

そのときはちゃんと届ければいい

 

読まなくなってしまった本なら

いつか読みたくなるときまで

そっとしまっておけばいい

 

どうしても思い出せない映画の結末があるなら

今度は誰かと一緒に

もう一度観ればいい

初めてのように驚いたり

泣いたりできればいい

 

ひとつ欠けながら ひとつ埋めながら

ひとつ失くしながら ひとつ抱きしめながら

 

春が来る 春が来る

 

 

「後悔」の裏側

戦いを終えた戦士が

冬の終わりに泣いた

 

誰のためだった 何のためだった

 

こぼれ落ちた涙は

誰に向けて書いたのかわからない

夏休みの読書感想文のように

誰にも どこにも 行く宛がない

 

戦車のような勇気と 裸のような勇気と

その時々で使う勇気は違うのに

わからないから とりあえず

僕らは今日も そのまま前に進んでしまう

 

ときに 正解しながら

たいていは 間違えながら

 

 

戻れないことを知りながら

それでも僕らは振り向きながら歩いてしまう

何かを確かめるように

 

明日にすればよかった洗濯物も

茹で過ぎてしまったパスタも

あのとき伝えればよかった気持ちも

 

どの後悔も 見事な後悔の色をしている

 

 

 

戦いを終えた戦士が

冬の終わりに泣いた

 

誰のためだった 何のためだった

 

戻れないことを知りながら

それでも僕らは振り向きながら歩いてしまう

何かを確かめるように

 

何度も 何度も

 

 

 

 

 

「後から悔やむ」ということは

それだけ大切なことだったということ

 

 

「後悔」をそっと裏返してみる