春が来る
春が来る
結局出せなかった手紙も
いつか読まなくなってしまった本も
どうしても思い出せない映画の結末も
そのまま そのまま
僕らは歩く 3月の風の中を
日差しと風に肩を揺らす草花たち
歌なんか流れていないのに
何かに合わせるように
鼻歌なんか歌ってしまう
いろいろなことがうまくいかなかったり
どこかで落としてしまったり
失くしてしまったり
僕らはひどく欠けながら
バランスが取れないまま
今日もベッドからフラフラと起き上がるけど
ほら ほら
こうやって歩ける ぐんぐん歩ける
眩しそうに見上げてみる
悔しいくらいに青い
出せなかった手紙なら
またいつか書くときは
そのときはちゃんと届ければいい
読まなくなってしまった本なら
いつか読みたくなるときまで
そっとしまっておけばいい
どうしても思い出せない映画の結末があるなら
今度は誰かと一緒に
もう一度観ればいい
初めてのように驚いたり
泣いたりできればいい
ひとつ欠けながら ひとつ埋めながら
ひとつ失くしながら ひとつ抱きしめながら
春が来る 春が来る