かけがえのない一瞬

三輪亮介の日常ブログです。ここでは仕事の近況・日々の想いなどを綴りたいと思います。

NEO⑦

 

それができたときに、

きっとこの1年が線で結ばれる。


11月3日の公演まで、残り1週間を切った。
あとたった1日の練習しか残っていない。例年だったら、ものすごい焦燥感に襲われているはずなのに、今年の僕は、なんだか淋しさの方が大きくなってしまっている。

10年、このミュージカルに関わらせてもらった。
この11月公演が、僕の卒業公演になる。

「町全体で、何か一つのことができないだろうか??」
そんな想いから始まったこのミュージカルが、ここまで僕の人生を占めるものになるとは思わなかった。最初は背景画を頼まれただけだったのに、今じゃ演出までやらせてもらっている。

「素人が集まって作るプロセスは、経験者の三輪さんからすると、充実よりも大変な事の方が多いのでは?」と、大学の後輩に尋ねられたことがある。
確かに、ここでの劇作りは、業界の常識が通用しない場面が多々ある。資金面でも、待遇面でも、技術面、精神面でも…。たぶん、足りていないことの方が多い。それでも、それを超える何かが、ここにはある。そう確信していると、その後輩に答えた。

10年の間に、子ども達が成長したように、僕の中にも、確かに成長と呼べるものがあった。
大学、ESS、会社、三輪組、いくつかの組織を生き抜いていく中で、埋没せずに、広い視野を持てたのは、常にこの場所が傍らにあったからだと思う。偏った年代との付き合いではなく、幅広い年齢層の中で20代を過ごせたことが、何よりも僕の財産になっている。
点ではなく、線。
命が生まれ、愛に育まれ、巣立ち、戻る。
円を描きながら、人が生きている。それが見える。

僕もまた、ゆるやかな円を描く中で、一周目を終えたところにきたのだと感じる。

10年分を込めて、とは思わない。
1年間に10年分を生きることができないように、この1年はこの1年でしかない。
今の僕の全力を注ごう。それだけだ。
それができたときに、きっとこの1年が線で結ばれる。そう信じて。