かけがえのない一瞬

三輪亮介の日常ブログです。ここでは仕事の近況・日々の想いなどを綴りたいと思います。

そういうものすべてが、僕のラークだった

禁煙6年目。
1日1箱半くらいのスモーカーだった僕は、過去3回禁煙に失敗している。

2003年、年明けを機に辞めようと、禁煙グッズ「ニコレット」(ニコチン入りのガム)を噛みながら、僕は好きな女の子と電話をしていた。(ちなみにこのニコレットは、当時のバイト先の「かつや」の店長が禁煙に成功した際に、余り物として僕にくれたものだった)
右ポケットには、「もう吸うまい」と、2002年の決意に押しつぶされたラークの箱。
肌を突き刺すような寒さの中、僕は祖父母の家の前の墓地を右往左往しながら、大好きな彼女の声に酔いしれていた。
やがて、白白と夜が明けていき、彼女の声を惜しみながら電話を切ると・・僕は2003年最初の、白く、長いため息を吐いた。その白いため息が、ありえないくらい大量だったことから、ハッと我に帰り、右手を見ると・・・
ラークが1本・・
「ぅえ!?!?」
大好きな女の子との電話で、完全にトランス状態に陥ってた僕は、ニコレットを噛みながらタバコを吸う」という、「ニコチン減らすどころか、ニコチン増えちゃったよね!事件」を起こしてしまったのだ。
以来、ニコレットは信用していない(いや、ニコレットのせいではない)・・。

2005年、大学2年の春。新入生の女の子に惚れた。
音楽好きなその子と、お互い好きな曲をMDに入れて交換したりするなど、マンガみたいなことをしていた。我ながら、さすが、マンガ家志望だったと思う。
先述の、24時間も禁煙できなかった件を話すと、「1日禁煙できたら、お弁当を作ってきてあげる!」という条約を取り付けることができた。我ながら、さすが、のちの、ちょい売れ営業マンだったと思う。
さておき、たった1日の禁煙とその報酬に歓喜した僕は、当日、合宿中だった英語劇サークルの後輩たちに、報酬のことだけは伏せながら、初の「24時間禁煙」という挑戦に息巻き、大いに盛り上げてもらった。そして、世紀のカウントダウンを埼玉県の志木の夜空に響かせながら、勝利のラークをその空に吹き上げた!
後日食べた、彼女の手作り弁当は、中身も味もうろ覚えだ(美味しかったのは間違いない)が、積年の完全なる脳内補完によって、史上最大に最高のお弁当であったことは言うまでもない。

3回目の禁煙話は、興味があったら過去のブログを覗いてみてほしい。

m-studio.hatenablog.com


タバコが大好きだった僕は、こんな大好きなタバコをやめるときは、それは「好きな女の子」が「やめて」と言ったときだろう、と思っていた。しかし、過去2回の禁煙で、僕が気づいたことは、僕は「好きな女の子」の力では、もはやタバコの誘惑に勝てなくなってしまっているという事実だった。
結婚をしてもそれは変わらなかった。

半ば、禁煙をあきらめていたとき、後輩たちが僕の家に遊びに来てくれた。

2014年11月だった。

後輩「みーワ、禁煙しないの?」
俺「するよ。年明けくらいかな(このとき11月)」

完全に、「タバコはいつかは辞めたいスタイル」に移行していた僕は、繰り返されてきた使い古された質問に対して、こんなふうに返した。

後輩「は?今からでしょ!」

林先生ばりの食い気味のリアクションに、一瞬、脳内ツッコミが入ったものの、次の瞬間僕の心の中に生まれたのは、次のような感情だった。

「後輩にガッカリされたくない・・」

後輩の、自分に対する理想像を壊したくない、守りたい。いつまでも、有言実行の男でありたい!そんなつまらないプライドのような「つまようじ」が、皮肉にも僕の「ラーク」の代わりになったのだ。
ニコチン依存の脱却には1週間はかかったように思う。そして、習慣依存(食事のあと吸う、お風呂の後に吸うなど)が抜け切るには3ヶ月〜1年くらいかかったと思う。正確に言えば、今でも吸いたいと感じる場面は多々ある。

そんな話を、この前、大学時代の友人である桐谷ヨウ(人気ブロガー・コラムニスト)とオンライン飲みで話してたら、早速、連載コラムにちょびっと書いてくれていた。

ちなみに友人に場末のヤンキーみたいなルックスで、超絶ファンタジックな絵を描く漫画家(三輪亮介。『多動力』のコミカライズを担当した)がいます。彼もけっこうなヘビースモーカーだったのですが、こないだオンライン飲みをしてたら禁煙しておりまして。

「俺は、あれだな。良い景色を見たときに吸いたくなっちゃうな。海、とかさ」とロマンチックなことを言うので、爆笑しました。

wotopi  

そんな彼とは、大学時代「犬猿の仲」と囁かれていたのだけど、卒業してからはこんな感じで近況報告したくなる間柄。お互い潜在的に近すぎたものがあったのかもなって、今では思う。
和解のとき、5号館の前で吸ったタバコの煙が、今でもあの頃の僕たちを残してくれている。そんな映像と、声と、寒さと、気持ちと、いろいろ。
そういうものすべて。そういうものすべてが、僕のラークだった。

だから、僕は禁煙したけど、タバコ自体は嫌いじゃなくて、人に迷惑をかけない範囲であればこれからもあっていい文化だと思う。

 

ちなみに、恋愛に悩むすべての人は一度、桐谷ヨウの著書を読むといいと思う。

恋愛だけじゃなくて人との関わり方の視点が変わるよ! 激しくオススメ!!!